願う場所、望む奇跡



だから正直、亡くなったと聞いても何の感情も湧かない。

弟も今は17か18歳のはず。

見ても誰か分からないだろう。


そうは思いながらも、母親と葬儀に出かけた。

久しぶりに見る父親は、ずいぶん老けた感じがした。

元々体が弱かったのか、息子を1人で育てたのが大変だったのか分からないが、病死だったらしい。

まだ、50歳だった。



「今日は、ありがとうございます」



父親の遺影を見つめていると、後ろから声がした。

振り向くと、そこにはイケメンと言えるほど整った顔の男がいた。

身長は、180cmはあるだろう。

すらりと伸びた手足。

思わず見とれてしまう。


そんな私に構わず、母親は話し出す。



「お久しぶりね。何も手伝ってあげられなくてごめんなさいね」



申し訳なさそうに言う母親に、私は驚いた。



「お母さん、知り合い?」



そう聞くと、母親は呆れた顔をした。




< 2 / 274 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop