願う場所、望む奇跡

*ひとひらの祈り




いつもなら、笑い声やテレビの音がしているリビングで、何一つ音がしないまま家族3人が対峙している。

私と義哉がリビングに入ってから、「座って」と声を出したきり何も言わない。

私も何も言えない。

何からどう話していいのか分からないから。

イヤ、むしろ話せる空気ではない。

重い空気がリビングを包み込んでいる。


どうしていいか分からず、無意味に目線が泳いでいる。

震えも止まらない。

覚悟を決めたつもりだけど、それでも不安は納まらない。

つい下を向いた時に、スッと隣から手が出て来る。

膝の上で無意識に力が入っていた手に、義哉の手が重なった。

驚いて義哉を見ると、優しく笑っている。

それが、大丈夫だよって言っているような気がした。

そのため、少しだけ落ち着くことが出来た。


それを見ていたのか、お母さんが口を開いた。



「さて、言い訳があれば聞くけど?」



怒鳴るでもなく、罵声でもなく、ただいつもと変わらぬ声で言うんだ。

少しだけ、拍子抜けをしてしまう。




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