エチュード ~即興家族(アドリブファミリー)~
家族のエチュード (最終話)
私を呼ぶ善の声が、遠くから聞こえる・・・いや。
遠いようで、実は近いような・・・。
私、まだ夢見てるのかな・・・。

「アキちゃーん」
「うー」

ゴロンと寝返りを打った拍子に、何かが足りないと思った。

あ。背中寒くなった。
それに、枕・・・がない。

手をバタバタさせて枕を探していたら、「何してんの、アキちゃん」と言う善の声が、私のすぐそばで、ハッキリと聞こえた。

「・・・まくら」
「あ?」
「ない」
「あー下に落ちてる、ってちょい待ちアキちゃんっ!」

焦った声を出してる、と思った次の瞬間には、背後から善にガッシリと抱きとめられていた。

「ここベッドだって忘れたのか?落ちるぞ」
「忘れてないし落ちないもん。だから離れてよ。枕取れない・・」
「はいはい。いいからそのまま。俺が拾うから」
「ちょ、とぜんっ!」

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