アーバン・ウォーリア

四話・なすりつけられたバカの護衛。

全く、あの少年には警戒心というものが欠けている。盗聴器から内容が丸聞こえだぞ。
適当に送ったメールは読んだらしい。しかし声の感じからして全く恐怖などを感じていない。いや、寧ろ興奮しているようだった。何か特殊な訓練でも受けているのだろうか?
全くこんな任務をなぜ私がしなくてはならないのだ。ただ、あの試作機を受け取るだけだったのが、なぜこんな仕事をさせられているんだか。

4話・なすりつけられたバカの護衛。

私は民間軍事会社シャークヘッドに所属する社員だ。傭兵というのはなかなか単独では仕事を探すのが難しいので集団になる。
そしてその集団はやがて組織化していく。私の会社は1000規模。創設して5年らしいがこの手の企業でこれはかなりのものだと思う。
私はこの会社に去年入社した。それまでは一人、傭兵として世界を回っていた。別に群れる必要もなかったからだ。
私の実力も認められそれなりの仕事が来るようになった。そんななか来たのが日本の最新型マシンウォーリアの引き取りだった。
依頼主(クライアント)はとある日本人。試作のマシンウォーリアのデータが必要ということで預けることが決まり、そしてこの依頼は私が担当することになった。
それだけなら良かったのだが、クライアントが追加で依頼したのだ。このことは社長から直々に話された。
「依頼のついでにこの少年の護衛を頼まれたのだ。報酬は弾む。やってくれないか」
もっと他に人がいただろうと思ったが、学校に潜入して護衛しなくてはならないため同年の私が選ばれたらしい。
兵士として私情を挟むのはよくない、がもうさっさと帰りたい。戦うのがやはり一番だ。この仕事が終わるまでとにかく毎晩こうやって監視し続けなくてはならないので全く寝れない。
あーあ、帰ったら散々いい散らかしたい。双眼鏡で見るとターゲットが寝始めた、スマートフォンをいじりながら。こっちは寝たくても寝られないんだぞ!!
手元にある拳銃で額を撃ち抜きたい衝動にかられるが必死に抑える。
はあ……、明日は極力彼の視界に入らないようにしなくては。全くだるい仕事をなすりつけられたものだ。
その夜私は一睡もせずに見張り続けた。



朝。目覚めて早々俺はいつものノートPCを立ち上げる。ただし有線ケーブルはインターネットではなく黒い大型コンピューターにつなぐ。
そしてアプリケーションを起動。黒い画面に白い文字が浮かび上がる。
[おはようございます。マスター]
文字を打ち込み返答する。これなら音も漏れない。さらにインターネットとの接続を切っているのでデータも流出しない。
《おはようだな。これをやっているということは、分かってるな》
[ええ。やはり気づいていましたか]
《ああ、昨日から盗聴されてるな。俺たち》
[それだけではありません。昨夜、デスクトップPCがハッキングされました。さらに私も攻撃されました。まあ、当然返り討ちにしてやりましたが]
《ああ、やっぱりな。程々にしておけよ》
[ええ。程々にせっかく来てもらって、手ぶらでは申し訳ないのでお土産にウイルスを30件ほど送ってやりました]
容赦ねえなこいつ。つーか、こいつ徐々に自我が芽生えてきてるな……。まあ、こちらとしては嬉しいが。
「お兄ちゃんー。ご飯だよー」
下で美香が読んでいる。さて、学校の準備しねえとな。
《とりあえず監視カメラにハッキングしといてくれよ。以上》
交信終了と画面表示される。俺はPCを元に戻し朝食をとり学校に向かった。
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