All I have to give
いつかハルと行った海とは全然違う、私の地元の海。
風が少し強くて、波の音も大きい。
「聞こえるかなー……波の音」
少し大きくなった私のお腹を摩って、そっと呟いた。
ハルとの間にできた、新しい命。
安定期に入り、外の風を浴びたくてここまで歩いてきた。
「おい!!!」
後ろからハルが物凄い速さで走ってくるのが見える。
顔はまだ見えなくとも、声だけで怒っているのが分かる。
「こんのバカ!!一人で危ねぇだろ」
「だって、お散歩は良いって先生に言われたし」
ハルの過保護には内心困っていた。
特に妊娠が分かってからは、一人で出歩くのも危ないとうるさい。
「俺と一緒じゃなきゃダメに決まってるだろ!」
「何それ、初めて聞いた」
「だって、今決めたから」
あぁ、もう。
昨日遅くまで仕事していて、少しでもゆっくり寝かせておいてあげたかったのに。
「ほら、転ぶなよ?」
少しむくれる私なんて気にもしないで、手を握って歩き出す。
「もうすぐ桜が咲きそうだな」
「うん」
ハルの視線の先に、桜の木がある。
この地で桜を見る日が来るなんて、あの頃は考えてなかったな…────
ふと、上京した時の頃を思い出して小さく笑った。
「何笑ってんの」
「……なんでもない」
「何だよ、言えよ」
今度はハルがムスッとする。
「一緒に見れるの、楽しみだなって」
思ったまま、言葉にする。
ハルはたちまち頬を緩めて、得意げに笑った。
「花より俺だろ?」
「バッカじゃないの?!」
すぐ調子に乗るんだから。
これから先、家族が増えたら賑やかになるんだろうな。
ハルは子供に嫉妬したりなんかして。
女の子だったら、ハルに似て可愛いだろうな。
男の子だったら、ハルが2人いるみたいに世話が焼けて仕方ないのかな。
「俺、花に負ける気しねぇから」
「もう意味分からないマウントやめて」
そういう子供っぽいところも、全て愛おしい。
ありがとう、ハル。
私の全てをかけて、ずっと愛していきたい…────
End
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