HALF MOON STORY
MOON



それからの週末は



時間があれば



ハルの部屋を訪れた




以前訪れた時と



変わらないハルの部屋



フローリングの床に



スチール製の棚が



壁に沿って置いてある



そこには



沢山のCDと



楽譜が置いてあった




それから



よく判らない楽器のパーツ




彼の部屋には



私の好きな音楽のCDが



沢山ある



ハルが東京に行って



一番困ったのは



音楽を聴きたい時に



聴けなかったこと



彼の部屋を訪れた時は



いつも始めに窓を開け



CDを聴く



もちろん



サボテンの世話もする



サボテンは手が掛からない



良い子



名前をつけた



おんぷだ



なんか単純だけど



私は気に入っている


おんぷは


アロマティカスという


品種の多肉植物だ



丸いサボテンを想像していた



私はその、観葉植物に



近い姿を見て



少し驚いたけど



とても気に入ってしまった



部屋に入る時には



ただいまと挨拶をし



誰かに話しかけたくなると



彼に話かけた



特に夕方



窓辺に座り



夕焼けを見ていると



どうしようもなく



悲しい時がある



そんな時



部屋を見渡すと



彼の姿が目に入ってきた



自分の部屋へと帰らなきゃと




思いながら



帰るのをためらう自分



少しでも彼の気配を感じていたくて



長居をしてしまう



そのくせ彼の不在に



どうしたらよいのやら



困ってしまう



話相手が欲しいのじゃない



退屈だからでもなく



ただ彼がいないという



その事実が



私を切なくさせるのだ



そうして日が暮れてしまう事も



あった



そんな時はいつも考える



どうしてあの時



ついていかなかったのか



今も後悔してしまう時がある



特にこんな



休日の夕方は駄目だ









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