Secret
だから

「……」

私は曖昧な笑みを顔面に張り付けた。

私のその笑顔を瑛太は“同意”と捉えたらしく至極満足そうな笑顔を魅せた。

『お~い、席に着け~』

ソエちゃんが教室に入ってきて、反射的に時計に視線を向けると授業開始時間になっていた。

話に夢中になり過ぎて予鈴にすら気付かなかった。

それは瑛太も同じらしく

「……やべっ!!」

焦った言葉を残して自分の席へと戻っていった。

話はここで終了。

だけど、なんとなくモヤモヤ感が残る。

始まったソエちゃん授業。

だけど、残念ながら学習内容は全く頭に入ってこなかった。

〝あっちの世界〟と〝こっちの世界〟

瑛太が言った言葉がグルグルと頭の中を回る。

この日、なんとなく私は瑛太との間に見えない壁を感じた。

それは考え方の違いによるものなのか……。

それとも……。
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