銀座のホステスには、秘密がある
「ありがとうございました」
「またいらしてくださいね」

彩乃と二人でお客様のお見送りに出る。
もう肩が冷えるようなことはなくて、そろそろ春なんだなって考えていた。

「彩乃。愛ちゃんの送別会で、プレゼント渡さない?」
「いいですね。何にしますか?」
「何がいいかなぁ」
「今度一緒に見に行きませんか?」
「いいわね。行こうか。ハナちゃんも誘う?」
「どっちでもいいですけど、私はサラさんと二人でもいいですよ」

そんな彩乃に笑いかけた時だった。

彩乃の後ろの方にこっちを見てる男の人がいるのに気が付いた。

ジッと真っ直ぐアタシを見てる。
背中にピリッと電気が走った。

「との……」

アタシの口がその男の人を呼ぶと、その人はアタシに背中を向けて歩き始めた。

「あ……待って……」

追いかけたいのに、胸がドキドキうるさくて、身体が動かない。

その間にも殿の背中は小さくなっていく。

「サラさん!」
彩乃が叫ぶけど、アタシの足が震えてる。

そんなアタシの代わりに彩乃が横を走っていった。
高いヒールで転びそうな彩乃は、一度も止まることなく走って、殿に追いついた。

何か話してる二人。

殿の横顔が遠く離れていても見える。

会いたくて会いたくてたまらなかった人が、目の前にいる。

こっちを向いた殿と目があった気がした。
彩乃が何かを言い、殿と彩乃がこちらに向かって歩き出した。

殿は俯いてアタシの方は見てくれないけど、少しずつ少しずつ殿との距離が短くなっていく。
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