銀座のホステスには、秘密がある
「ここにいると目立ちますから」
彩乃がそう言ってアタシと殿をエレベーターに乗せた。

「ここで待っててください」
お店のドアの前でアタシと殿を置いて彩乃が一人で入っていく。

「サラ……ますます綺麗になったな」
寂しげに笑う殿の袖を掴んでいた。
この手を離したら、また殿に会えなくなるんじゃないかと思って、ひたすら殿の袖を離さなかった。

殿は寂しげに笑う。

「アキラ……」

誰もいないエレベーターホールで殿がアタシの本名を呼ぶから、
「っ…うぅ……あい……会いたかっ……」
我慢してる涙が止まらなくなる。

「おまえが泣いてくれたらそれで十分だ。アキラ。俺を信じてくれるか?」
「ん……」
言葉が出ない代わりに首をブンブンと縦に振った。
全く品がない、銀座らしくない受け答えだけど、それしか出来ない。

「最後におまえに会えて良かった。おまえには迷惑かけられないから、そろそろ帰るよ」
殿がアタシの手を離そうとする。

「殿……」
ダメ。
この手を離したら、もう二度と会えなくなる。
そんな気がして仕方がない。

「サラ。ありがとう。でも……」

その時、お店のドアが開き、あかねママとゴンちゃんを連れて彩乃が出てきた。
< 181 / 222 >

この作品をシェア

pagetop