銀座のホステスには、秘密がある
銀座の恋愛とは
「ハナちゃん……ツケマ?」
目だけが強調されたハナちゃんのメイクに、言葉が出ない。

いつもより早い時間に出勤して、ハナちゃんにトーク術をレクチャーしようとしていたのに、そのメイクの方が気になってしまい

「サラさんの真似してみました。どうですか?」

ここは素直に変だと教えてあげるべきなんだろうか。
それともその努力は認めてあげるべきだろうか……

「何、その顔。お化けみたい」

背後から聞こえたローラママの言葉に
「はぁ」
ため息が出る。

アタシの事が嫌いなのは分かるけど、アタシが教えてる娘まで酷い扱いすることないのに

「ローラママ。ハナちゃんはこれからなの。そんなこと言って彼女の……」
「似合ってないものを似合ってないって言って何が悪いの!ちょっとサラどいて」

ローラママが強引にハナちゃんの隣りに座ってたアタシの椅子に座ろうとする。

「イタっ。アタシが教えてるのに、邪魔しないで」
「うるさいわね。黙って見てなさい」

椅子取り合戦みたいになったけど、お尻で勝てる訳なかった。

ローラママはハナちゃんのツケマをミシリと剥ぎ取ると、ハサミでいきなり切りだした。

「あー」
ハナちゃんから哀しそうな悲鳴が聞こえたけど、
「だいたいね。いきなりこんな長い付けまつげ、あんたに使いこなせる訳ないでしょ」
ローラママは叱りながらテキパキと手を動かしていた。

数分後、
「……うん、いいわね」
「ハナちゃん。可愛い」
「そっちの方が似合うよ」
アタシたちを囲んでたみんながそんなことをポツポツと言っている。

「そうですかぁ?」
ってハナちゃんはむくれてるけど、確かにローラママが手直しした今の方が断然いい。

「うん。確かにこっちがいい。ローラママすごい」
うっかり褒めてしまったら、
「当然じゃない。私はね、元はカリスマ美容師だったのよ」
って鼻の穴を膨らませながら言いだした。

知らなかった。

銀座で働く女は様々な事情がある。
最近は華やかな世界に憧れて入ってくる人もいるけど、ちょっと前まではみんな訳アリ、借金アリって噂を良く聞いた。

きっとローラママも深い訳があってこの世界に入ったに違いない。

尊敬の眼差しでじっと見てると、
「何よ。今度は何って言うつもり?黄色だからバナナとか言うつもりでしょ?」
ローラママが言わせないわよって顔で見てるけど……
言わないけど。
でもバナナって言うより、洋ナシって感じなんだけど……
< 51 / 222 >

この作品をシェア

pagetop