あと一歩の勇気を―君が全てを失ったあの日、僕らは一体何ができただろうか―
第二章

彼はこんなにも愛されている

『俺さ、バスケしてる時アホみたいに死ぬほど幸せなんだよ』


机の上に肘をつきながら朱の目を真っ直ぐ見て何の気無しに秀俊が言った。
突然話を持ちかけられたからか、それとも自分を潔くアホと罵ったからか死ぬほどなんて言ったからか、ポカーンと口を開ける朱の開けた口の端から飲んでいたお茶がツーと垂れてくる。


『まぁ秀はアホだけどさぁそんなに?』


零れたお茶を慌てて拭きながら何とか意識を取り返してきた朱は、一番引っかかりを覚えた単語について問う、訳が無かった。


『オイコラ、失礼な事言ってんじゃねー。そうだよ、相手をドリブルで抜かした時とかシュート上手く決められた時とか相手の悔しがってる顔みるとよっしゃ‼ってなるとことか』


キラキラした目で練習試合を思い出しているのか、公式戦を思い出しているのか分からないが、楽しそうに語る秀俊は正直顔とは裏腹に言ってることがよろしくない。


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