Fly*Flying*MoonLight

AM8:15 会社の地下駐車場

 会社ビルの地下駐車場。和也さんがスマートに車を停める。
「ありがとうございました、社長。私まで乗せて頂いて」
「ああ、ついでだから」
「……あ、りがとう、ございました……」
 トレンチコートを着た美月さんが、颯爽と後部座席から降りた。きちんとしたまとめ髪。一分の隙もない。脚も長くて、モデル体型。
本当に、この人絵になるなあ……。

 ぼーっと見とれていたら、
「どうした?」
と、和也さんの低い声がした。
「あ、すみませんっ!」
 慌てて、ドアを開けて降りる。つん、とつま先がひっかかって、前のめりになった。うっ、転ぶところだったっ!
「大丈夫?」
 美月さんが心配そうに声をかけてくれた。
「は、はい……」
 肩から掛けた鞄を持ち直す。なんか、あたおたしていて、恥ずかしいなあ……。

 ……あの後、車を道端に停めて、和也さんが電話をかけた。相手は美月さん。
「……ちょうど、駅にいるらしいから、美月も乗せればいいだろ?」
 ……私は黙って、頷いた。

 もう、美月さんが恋人でいいじゃない。美人で気が利いて、スタイル良くて、言う事ないわよね……。

 そう思いながら和也さんを見ると……和也さんは社長の顔になって、先にエレベーターホールに歩いて行った。

「……内村さん、ちょっとお時間貰っていいかしら?」
 美月さんが私をじっと見ていた。
「は……い、大丈夫です」
 まだ時間は早いし、始業の九時には間に合う。
「じゃあ、荷物置いてから、秘書室に来てね」
 美月さんはふふと笑って、社長の後を追った。私も、エレベーターホールへと歩いて行った。
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