あの日見た放課後の夕日
今日は部活をサボった。



そんな気分じゃなかった。



椎君、あれから私に口聞いてくれなくなった。



はあ…



私は誰もいない校舎からグラウンドを見る。



サッカーしてる椎君。



だけどなんか今日の椎君はいつもと違う。



「椎、相当荒れてるねー」




「わあ!」




背後からやって来たのはサッカーの服を来た先輩らしい人だった。




「ごめんごめん、そんなに驚くとは」




そう言って笑う先輩。




サッカー部なのは分かるけど…誰?




「あ。俺は霜月柊、未羽ちゃんだよね」




「わ、私の名前…」




「未羽ちゃんと椎が付き合ってるって聞いたよ」




「そうですか…」




「椎は正直、俺ら3年よりサッカーうまい。初めはびっくりしてね」




「…」




先輩につられて私も窓からグラウンドを見る。




「サッカーもうまいんだけど一番はやっぱり足が一番速いな」




「そうなんですか?」




「あれ、知らない?結構有名だよ?」




「…知りませんでした」




椎君の事、誰よりも知ってるはずだったのに。




「そうなんだ、意外だね」




「…」




「椎、何かあった?」




「え…。あ、」




思い当たるのはやっぱりあれ…。



「ん?」




「あの…私が椎君を怒らせちゃって…きっとそれが原因なんじゃないかと…」




「椎が怒った?珍しいな」




確かにそれは珍しいことだった。




私たちは付き合ってから一度も椎君は怒ったことなかった。




「よっぽどの事があったんじゃない?」




「それが私も分からなくて…」




「ふーん、そっか」




「あの、先輩は部活行かなくて良いんですか」




「そろそろ行くよ。ただ未羽ちゃんと話したかったから」




「え?」




「いや、俺こう見えても視力だけは良くてね、グラウンドからここ、見えたんだ」




「そっ、そうなんですかっ?」




なら椎君も…って、




そんな心配はなかった。




だって椎君は目が少し悪いんだもん。




「そそ」




「目が良いっていいですね!サッカーでも役に立ちそうです」




「ありがとう。まあね」




「じやあ、頑張って下さい」




「さんきゅ、じゃね」




そう言って爽やかな先輩は手を振って階段を降りて行った。




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