シルビア




「……凛花のそういうところ、本当困る」

「え……?」

「かわいすぎて、困るよ」



手の端から見えたその顔は、困ったような、泣き出しそうな、笑いたそうな複雑な表情。



「人の気持ちも知らないで、そうやって可愛いところばっかり見せるんだもん。どうしていいか分からなくなる」

「……望……?」

「凛花を想うと、つらいよ。苦しくて……愛しすぎて、泣きたくなる」



つらい、苦しい、愛しい?

その言葉と、向いた瞳に込められた意味を問いかけようとするより早く、望の顔は近付いて、唇を塞ぐようにキスをする。



それは、先日の、あの触れるだけのキスとは違う、しっかりとじっくりと、吸い付くような激しいキス。

頭と体に回された手は、しっかりと抱きしめて離さない。



「ん……、」



突然のことに、驚きと激しさで酸欠になりそうだ。

けれど、変わらぬその感触と匂いに心はときめきを抑えられない。



キスをしたままの形で、ふたりは自然と身を潜めるようにすぐ近くの商品管理室へと入って行くと、そのままテーブル脇のスペースになだれ込む。



私の手がぶつかり、テーブルの上の箱に入れておいたパールのビーズが床に落ちると、ジャラジャラと一面に散らばった。

けれどそれをかき集めることもせず、荷物にあふれた部屋の片隅で私たちは互いを求め合う。


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