ユウウコララマハイル
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ハムスターPOPの隣に関連書籍を多数置いた。
売れ行きはいまいちだったが、近所にあるピアノ教室帰りの幼児や塾帰りの小学生で夕方のハムスターコーナーの人気は高かった。
そのせいか児童書コーナーの乱れがほとんどない。
それがよいことなのかわるいことなのかナツミは判断できなかったが、水島は気を揉んでいるようだった。


子供客からハムスターのもらい手は出ないものか。


店頭に捨てられてから二週間。
残り一匹のもらい手が見つからないのだ。
その一匹のためにスペースは空けられないと店長が言ってきたのが昨日、いい加減どうにかしろということで、できなかったら「捨てて来い」という脅しがかかったのだ。
水島は日本に野生ハムスターがいないことを店長に説明した。
それは捨ててもペットのハムスターは猫や猛禽類の餌として狙われるだろうし、餌も自分で見つけることができないから死んでしまうということだ。
確かにナツミもハムスターが「外来種として処分対象」などの話を聞いたことがない。
ハムスターもネズミ科であるから、ネズミ算式に増える種であるのに。


水島の「飼ってみませんかぁ?」と勧誘する声は、子供たちの姿を蜘蛛の子のように散らしてしまっている。
中には「親に聞いてみる」と水槽前にへばりついて眺めていた子供もいたが、再び来るかどうかはわからない。


そうして水島が勧誘や世話などに時間を割いているためか、ナツミの仕事がさらに終わらない。
客注データ入力や問屋からの仕入れ金額集計、出版社などからのファックスやメールのチェック。
社員は売り場に率先して出なくてはならないとわかってはいるものの、どうしてもパソコンの前から離れられず営業時間中レジ業務と兼任することになってしまう。
そして閉店後に、ハンディーターミナルという端末機械で本の抜き取りをするはめになる。
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