ユウウコララマハイル
―――――アイツ、また。


いつだって手柄を人に譲る。
照れくさいのか、不器用なのか、格好をつけたがるのか。
そのどれでもあるのだろうが、こういった親切ははっきり言っていらないものだ。


「ナツミちゃん、僕変なこと言ったかな?」


自然と眉間に皺が寄っていたようだ。


「マスターならわかっていると思うんですけど、あのクローバーは古沢が自分で取ってきたものです」


自分が一日がかりで見つけられなかったものを、古沢は腹が立つくらいいとも容易く取ってきていた。
「四葉は奇形で」などと薀蓄を披露して見つけ方を伝授しようとしていたくらいだから、古沢にとってそれは朝飯前なのだろう。
けれどナツミはその知識を持っていたとしても見つからないような気がしている。
おそらく古沢は四葉のクローバーを見つける幸運な目を持っているのだ。


「お礼ならやっぱり、私じゃなく古沢に。おばあさんにもそうお伝えください」
「そう言われてもね、お礼が宙ぶらりん」


雑誌を受け取った反対の手で差し出したのは光沢のある白地の紙袋で、その中には大きな赤いリボンが結んである洒落たケースが入っている。
裁縫箱ということだが中身は入っていないので、それ以外でも活用できそうだ。


「人から頂いたものらしいんだけど、自分には必要ないからと」
「優しい嘘なのでは?」


実は自分で選んだものなのではないだろうかと勘ぐってしまう。
周囲の人もある程度の年齢になると裁縫箱などプレゼントしないとも思う。
おばあさんが古沢のことを思って選んでいる姿がナツミの脳裏に浮かんでくる。
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