気まぐれ猫系御曹司に振り回されて
「私の休日ってこんなものなの。これ以上一緒にいたって楽しくないと思うわよ」
「デートならディナーも一緒に食べるもんだろ?」
「それは……」

 そうかもしれないけど、と凜香は口の中でつぶやいた。

「昼は外食だったから、夜は凜香の手料理が食べたい」
「は?」
「凜香の家に行きたいんだ」

 透也が凜香を見つめる。そんなふうに甘えるような目をされたら、どんな女もイエスと言ってしまいそうだ。けれど、その手は食わない。凜香は速まった鼓動をなだめるように低い声で言う。

「どうしてそういう展開になるの」
「凜香の屋上庭園での秘密を黙っておく見返りのデートだから」

 そう言われては、イエスと言うしかないのだろうか。凜香は頭の中で部屋の様子を思い浮かべた。作業用デスクには製作中の風車型オルゴールが置いたままだし、部屋には康人に分けてもらったモーターがいくつも転がっている。カットしたプラスチック板の切れ端やビニールテープ、ドライバーなんかも出しっ放しだ。〝できる女〟のイメージからは程遠い。

「ごめん、やっぱり今日は無理。イメージダウンになりそうなくらい部屋が散らかっているから」
< 30 / 91 >

この作品をシェア

pagetop