気まぐれ猫系御曹司に振り回されて
 ワンボックスカーをこすることなく、車庫の壁にぶつけることなく無事に駐車できて、凜香は額の汗を拭った。後部座席に置いていた荷物を取り上げ、車から降りると、お土産の紙袋を姉の家の玄関に入れてから、住宅街の外れにある大きな公園を目指した。

「いい天気!」

 緑に生い茂った枝葉を通して初夏の日差しが降り注ぐ。公園には大きな噴水があり、噴水の近くの〝ちゃぷちゃぷ池〟と呼ばれる足首よりも浅い池では、サンダルや裸足の子どもたちが水遊びをしていた。その向こうの広場に、凜香は姪の成実の姿を見つけた。

「成実ちゃーん!」

 大きな声で呼んで手を振ると、コマなし自転車に乗る練習をしていた姪が、よろよろと両足をついて自転車を停めた。凜香に気づいて片手を大きく振る。

「凜ちゃん! 来てくれたの!」
「そうよ~。風車のオルゴールをあげるって約束してたでしょ」

 凜香は姪に駆け寄った。成実は現在、幼稚園の年長組で六歳。双子の兄、成樹がとっくにコマなし自転車をマスターしてしまったのが悔しいらしく、現在猛特訓中なのだ。だが、涼香によると、怖がってどうしてもうまく乗れないらしい。
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