気まぐれ猫系御曹司に振り回されて
「ああ、もちろん、本物のデートじゃなくて結構ですよ。誤解されたらいけないしね。ただ、普段の七瀬さんを見てみたいなって思ったんです。いったいどんなふうに過ごしてるのか……」

 透也が一歩足を踏み出したので、凜香は思わず一歩後ずさった。

「ふ、普段の私?」
「そう。どんな服を着て、何を食べ、どこへ行って何をするのか。すごく興味があります」
「わ、私と一緒に休日を過ごしたって、少しも楽しくないと思うわよ」

 凜香の口調はもう必死になっていた。イメージ通りの〝できる女〟なんてもう気取っていられない。

「いーや、すごく楽しいと思うな。七瀬さんのすべてが知りたいんだ。ついでにさっきみたいな声を聞かせてくれるシチュエーションも大歓迎だけど……それはやっぱりまずいか」

 透也が余裕の表情で言う。完全に凜香の弱みを握った気でいるようだ。凜香は歯ぎしりしたいのをどうにかこらえて、歯を食いしばったまま深く息を吐いた。

「わかった。じゃあ、明日の土曜日、十一時からデートしましょ」
「やった!」

 透也がパチンと指を鳴らした。

「ただし、デートプランは私が考えるから。いいわね」
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