気まぐれ猫系御曹司に振り回されて
「ううん、今は違う。成実ちゃんと成樹くんが一歳になったとき、タオルでぬいぐるみを作ってあげたの。そうしたら二人がとても喜んでくれて。まだ〝ありがとう〟だってちゃんと言えないのよ? それなのに一生懸命感謝の気持ちを伝えてくれようとするの。それがすごく嬉しくて、また新しいおもちゃを考えて……二人に喜んでもらうことばかり考えてたら、会社の仕事にも夢中になってて、康人さんのこともいつの間にか吹っ切れてた」
「それなら……」
「透也くんの気持ちに答えてもいいって思う? でもね、私、中学生の頃から康人さんのことが好きで、就職してからもしばらくは彼のことばかり見てた。それに、会社で私がどんなふうに言われてるか……知ってるでしょ」

 凜香の問いかけに、透也が答える。

「仕事が恋人の……クール・ビューティ……そこら辺の男には興味がないって……」
「そう。だから、私……」

 男性経験がない、とは恥ずかしすぎて言えなかった。それは透也も察したようだが、まだ納得できていないようだ。

「でも、じゃあ、あのときの声は……」

 凜香はゴクリと喉を鳴らして答えを明かした。

「ショコラ・レーヴ」
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