獅子王とあやめ姫
 体の芯が瞬時に凍てつついた気がした。

 そんなイゼルベラにはお構い無し、まるで自分がそこにいないかのように、兄とその臣下たちは運ばれる町娘に付き添っていった。

 呆然と立ち尽くしていたが、誰もいなくなった静寂と、イーリスの胃を洗浄したあとの臭いにふと気付いた。

 何かが燃え上がり、凍りついていた芯をどろどろに溶かしていった。
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