恋する淑女は、会議室で夢を見る
「・・・」

「心配しなくても
 真優は
 どこからどう見ても 可愛い女の子だ」

そう言うと、
うつむいたままの氷室先輩の口元に、ほんの少し微笑みが浮かび

そのまま、
チラッと、上目づかいで真優を見た。



ドキッ

―― せ・・先輩っ


次の瞬間、氷室先輩はまた雑誌に目を落とす。



「ありがとう ございます…」


ドキドキ

真っ赤になって動揺していることを誤魔化すように
 真優は慌てて水を飲んで、軽く咳払いをする。

 ・・・コホン





入社して以来
これまで何度、氷室先輩に仕事で助けられたかわからない。



―― ちょっとぶっきらぼうだけど、
  優しくて 頼もしくて 素敵な先輩


雑誌を読む氷室先輩から、気持ちを引き離すように視線を離し
真優は、あてもなくスマートフォンの画面に指を滑らせた。

機械的に友達のブログを開いてみたものの、目には映るだけで
 写真も文字も頭に入らない。


真優は、心の中で 氷室先輩に語り掛けていた。


先輩、気づいてますか?

  会社の女の子達 先輩を狙ってる子沢山いるんですよ
  この前 同僚のマリちゃんに氷室先輩 彼女いるのかなぁ?って聞かれました
  私は、さぁ どうだろう、って答えたけど

  本当は私、見ちゃったんです
  友達と行ったバーで偶然

  カウンターに、先輩が、グラマーな美人といて
  見たことがないような笑顔で笑っているところ

  そして、先輩がその美人の腰を抱くようにしてバーから出ていくところまで


素敵な恋人がいるんですね… 先輩…
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