恋する淑女は、会議室で夢を見る


「真優っ ちょっと見てみて
 すっごいよ!超イケメン」

「ん?」

「モデルかな」

絵理が覗き込む方を見下ろすと、
停まっている白い外車の助手席のドアを開け、
やたらとカッコイイ男が、車に乗る美人をエスコートしていた。

白く輝く高級車に負けないゴージャスな2人は、
その間ずっと話をしながら楽しそうに笑っている。

アスファルトから立ち上る熱気もどこ吹く風、
白っぽいリネンのシャツを涼しげに着こなしたイケメンは、片手でかき上げた髪を爽やかに靡かせた。



―― えっ?

見覚えのある笑顔を、よくよく見れば

「 専務… 」

「なになに? 真優知り合いなの?」

「桐谷専務…」

「えええ!!?」

道行く女子の目を釘付けにしているその人は
そう、真優の上司桐谷遥人だった。

そして、相手の女性は…


「…LaLa」

「え!?
 あ、本当だ LaLa!」

サングラスをしているが、間違いない。
人気ファッションモデルのLaLaだ。

「あー、そういえば真優
 誰だかの披露宴で見たって言ってたね」

LaLaをエスコートしてから桐谷遥人が運転席に乗ると、車は静かに発進した。


―― 専務、車運転するんだ…


「すごい!
 すごいよ真優
 あんなカッコイイ人と仕事してるの!?
 あれ?そういえば 氷の王子だっけ いやー全然優しそうじゃん
 ねーねー LaLaと付き合ってるの?」


白いBMWは、あっと言う間に見えなくなった。

「さあ 知らない…」
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