さくら


「吉武桜子です。10歳です」



聡志が連れてきた小さな女の子。10歳の割には背も低く、痩せっぽち。荷物は小さなボストンバッグ1つだけ。

志信の母の藤子はずっと女の子が欲しかったらしく、聡志が10歳の女の子を引き取り育てると言い出したとき事の他喜んだ。

桜子は昔、住み込みで働いていた看護師の未散の子供だ。ある日突然『お世話になりました』と書置を残し、いなくなってしまったそうだ。両親にはなんとなく事情がわかっていたらしいけれど、未散が出て行ったのは志信が10歳になるかならないかのときで、なんで出て行ったのかはわからない。覚えているのはいつも笑顔で優しく、可愛らしい人だったなということくらいだ。

ある日突然、聡志に新潟の児童養護施設から連絡があったらしい。

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