さくら


「・・・・・・・・・・お前、可哀想やな。全く気付かない志信の鈍感さにもビックリやけど」

初めは指先だけでそっと触れられるだけだったのが、朝倉の掌が頬を包み込む。

「オレにしたらええのに・・・・・」

桜子の頬に一筋、涙が伝う。
朝倉の親指がそれをすくいとり、拭う。

「ごめんな。泣かすつもりはなかったんやで。けどオレもいい加減思いきらんと次にいかれへんから・・・・・」




兄のように思っていた。

朝倉の気持ちも知らず、甘えていた。

なんて残酷なことをしていたのだろう。

頬を包む朝倉の手に自分の手を重ねて、桜子は何度も心の中で許しを乞う。


どうかこの自分の指先から、掌から、ごめんなさいの気持ちが伝わりますように・・・・・

桜子は願った。

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