千年姫の幻想界

「はぁ」

こうして考えるのもも何度目だろうか。

彼は気を取り直すと、ベッドから降りて伸びをした。

そして、シャッとカーテンを引いて窓を開ける。


「うわっ」

開けた途端、ぶわっと強い風が流れ込んできた。

後ろでバラバラ音が響く。


テーブルの上に置いてあったペンや小物が落ちたらしい。


うんざりと振り返った彼の目に、一際目立った鮮朱のビー玉が写る。



──ド ク ン


その瞬間、心臓が大きく跳ねた。



そして、何故こんなものが──など考える間もなく、一つの映像が稲妻の如く脳裏を駆け抜けた。



──さっきの夢と、同じ世界……。


「……っ!」


堰を切ったように様々な映像が早送りされ、頭がパンクしそうだ。



(なんだ、これは……っ)


そんな事を考えている余裕もなく、きつく目を瞑って頭を抱えた。



──華──……


華……?



──貴方には──

誰かの声が


──千年の罰を──

千年?




「っは……」



フラフラとしゃがみこむ。


尚も部屋に吹きつける風で、カレンダーがペラペラ激しく震えていた。



────夢を見始めて約二年。



記憶が浮かび上がると同時に、彼の意識は再び深い闇へと沈んだ。


机から落ちたビー玉は、光を受けて明るい朱色の影を落としていた──


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