ケータイうさぎと意地悪先輩。FINAL

「ううん、知らない。どういう作品なの?」

「コジ・ファン・トゥッテは、モーツァルトが作曲したオペラ・ブッファ(喜劇オペラ)で、女性が浮気者かどうかの賭けをして、女はみんなこういうもの、という哀れな結末に終わる、ベートヴェンも軽薄すぎると憤慨した作品らしいわ。その第二幕後半のアリア、恋は小さな泥棒を姉さんが歌うのよ」

「そうなんだ、すごい作品なんだね。雨瀬先輩の曲は知ってるの?」

 私がそう尋ねると、絵美ちゃんはうっとりとした表情を浮かべる。

「ええ。雨瀬先輩が歌う、さようならの作曲者、フランチェスコ・パオロ・トスティは、メルカダンテに師事し、作曲家、声楽教師としてイタリアのみならず、イギリス王室にも仕えて活躍し、声楽作品がオペラではなく、歌曲を中心に作曲したらしいわ。
 甘美なロマンティシズムに満ちたトスティの歌曲……。雨瀬先輩にぴったりね」

 私は眉を下げ、苦笑いする。

「そうなんだ、すごい曲なんだね……。私には分からないや……」


 16時30分になり、客席は満員になった。

 客席の電気が落ち、少し暗くなり、ステージの明かりがオレンジ色に輝く。

 ドレスを着た女性が舞台の袖から出てきて、グランドピアノの前で礼をした後、椅子に座り、椅子を調節し、ピアノを弾き始める。

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