ケータイうさぎと意地悪先輩。FINAL
「犬垣君っ……」
下駄箱で靴を履き替え、1階の3年B組の教室に着くと、右肩に鞄をかけ、頬をパンパンに張らした犬垣君が待ってくれていた。
犬垣君の右の頬には、大きな手形がついている。
「頬、大丈夫?」
「うん」
私達は後ろの扉から教室の中に入る。
「ないっ……。スマホがないわっ……」
一人の女子が、廊下側から2列目の一番後ろの机を覗きこみ、慌てていた。
やっ、やっぱり、このスマホ…………。
「あっあのっ…………」
後ろから声をかけると、女子が振り向いた。
ストレートロングの髪に青色のりぼんがよく似合っている。
「佐熊絵美(さくま・えみ)ちゃん…………だよね…………?」
私が尋ねると、女子は微かな笑みを浮かべる。
「え、何言ってるの? 今更。そうよ、わたしは佐熊絵美よ」
女子は綺麗に澄んだ声で言った。