寂しがりヒーロー
呻き声、殴る音。
僕の聴覚を刺激する。

砂埃、辛そうな表情。
僕の視覚を刺激する。

未だに慣れない。

僕は、こんな景色を見たこと、この高校に入学するまで無かったし。

やっぱり、好きになれないかな。
こんなに痛そうで、うるさくて。

今の僕は、完全なる傍観者だった。

まるでリアルな映画を観ているような、そんな感じ。
自分には、関係が無いって思っちゃう。


「伊月さんっ、大丈夫ですか?」


相手の拳をかわし、殴っている玲に突然聞かれ、「あ、うん」と慌てて答えた。

どんどん倒れている人の数が増えていく。
でも、その中に知っている顔はない。

僕の高校の9人は、ピンピンしてる。

さすが、みんな。
強いね。


新岸高校の20人を全員倒したのを見て、僕はパチパチと手を叩いた。

相手を倒した仲間に、敬意を表して。
< 10 / 108 >

この作品をシェア

pagetop