寂しがりヒーロー

好きじゃなくて、愛してます。

「話さなきゃいけないことって...さっきの...?」

「...うん。...どう思った?さっきの僕を見て」

「...正直、ビックリした。伊月があんなに強いって知らなくて」


カモちゃんは困ったように微笑む。
カモちゃんを困らせるのは、承知の上での質問。


「カモちゃんにね、ずっと隠してたんだけど...僕は、高校のトップなんだ。僕が一番強いって言われてる」

「そうなの...!?」

「...うん。だけど、僕はカモちゃんのためにしか戦えない」

「私...?」

「うん。カモちゃんのためじゃなきゃ、僕は力を発揮できないんだ。だからね、カモちゃんが危ない目に遭っているとき、僕は殴り合いをしてた」

「...全然知らなかった」

「...知らないのも当然だよ。僕、ずっと必死に隠してたんだから」

「隠してたって...なんで?」

「それは...」


僕は怖くて、俯いた。
そして、一つ息を吐いて、言葉を紡いだ。


「...怖かったんだ」

「え...?」

「...カモちゃんに、嫌われるのが」

「嫌う?どうして私が?」

「だって...僕はカモちゃんの弟みたいなものだから...そんな僕が殴り合いとかしたり、ましてやトップだなんて。そんなの...暴力的だとか、怖いとか、思われるだろうなって。そうは思われなくても、きっと一人で大丈夫だって思われて、僕は...独りになっちゃうだろうなって...」


泣きそうになるのを、必死で堪える。

僕は俯いたまま、次に返ってくるカモちゃんの言葉を怯えながら待っていた。
< 102 / 108 >

この作品をシェア

pagetop