寂しがりヒーロー

やっぱり、噂通りですね。

それから放課後になり、僕らは裏庭にいた。

僕は適当に腰掛けて、仁太くんが来るのを待つ。

そして暫くして、仁太くんがやって来た。


「...んで?トップっていうのは誰?」

「...僕、だけど」


僕がそう言って手を挙げると、仁太くんはフッと笑った。


「やっぱり、アンタか」

「...分かってたの?」

「確信はしてなかったけど、各高校で聞いたそのトップの名前と一致してたから。それに、噂通り背も低くて弱そう」

「...そっか」

「さっさと始めようぜ」


仁太くんはそう言って僕を見る。


「...いや、伊月さんの前に、俺らを倒してくれよ」


玲や絋ちゃんが僕の前に立ちはだかる。


「...守られてるねぇ、伊月は」


そう言って仁太くんは体勢を整え、僕から目を逸らし、玲を見た。

そして、玲が、倒れた...。

...何が起こったのか、分からない。
そこには、痛そうに腹部を押さえて倒れている玲がいたから。


「...はえぇな」


...速すぎて、意識が向く前にやられてしまったんだ。

玲はフラフラと立ち上がり、仁太くんを殴る。
だけど、その拳はいとも簡単にかわされ、玲はまた殴られた。


「いってぇ...!」

「ははっ、弱いなー、やっぱ」


仁太くんはそう言って玲を見下ろす。


「...お前ら、行くぞ」

「はい」


絋ちゃんがみんなに合図をする。
玲だけじゃ、ダメだ。
それに気付いて、みんなが仁太くんを見る。

仁太くんは、それを楽しそうに見ていた。
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