初恋パレット。~キミとわたしの恋の色~
 
百井くんに同調するように相づちを打ちながら、けれど胸の中では、まったく違う気持ちが去来していた。

わたしはまた勝手に失恋した気分になって、膝の上の鞄に付けたキーホルダーに視線を落とす。

百井くんは気づいていないだろうけれど、わたしが彼の中での〝ここからは話したくない〟というラインを踏み越えそうになったとき、百井くんは無意識にわたしから目を逸らすし、言葉数が増える。

最近になって知ったその癖は、話の内容の隠れた部分に実結先輩がいるときに顕著だ。


今も絶対にそう。

どういう理由からかはわからないけれど、百井くんは実結先輩を守っている――。


顧問である持田先生にも話せずに、百井くんの胸の中だけに留めているそれは、いったいなんなんだろう。

だけど当然、わたしにそれを聞く権利はない。

顧問の先生にも話せないものを、どうしてわたしに話せるというのだろう。

わたしはただの百井くんの友だちだ。

そのラインだけは、わたし自身でしっかりと自覚し、踏み外さないようにしないといけない。

……だって、ラインを引けるのは、わたしだけなんだから。
 
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