初恋パレット。~キミとわたしの恋の色~
小さい頃はその姿を格好いいと思ったこともあったけれど、もう少し大きくなると、逆になった。
小学生の頃にはクラスの男子に父のことで冷やかされたこともあったし、せっかくの休みなのに家族揃って出かけたこともない。
一番嫌だったのは、わたしが中学生の頃、田舎の写真館のカメラマンとはいえプロの父が、カメラマンとしてはあり得ないミスをしたことだ。
それ以来、わたしは前にも増して写真が嫌になり、そのまま今にいたっている。
「……ニナ」
「ほぇっ!? なな、なに?」
〝百ノ瀬写真館〟というワードが出てきて、つい感傷に浸ってしまっていたわたしの耳に、百井くんが呼ぶ声が入ってくる。
はっとして意識を現実に戻せば、彼は「着いた」と言ってわたしを地面に下ろす。
見ると写真館兼住宅である百ノ瀬写真館の真ん前に立っていて、どうやら長いこと黙りこくっていたらしいことが、ワイシャツの襟元をパタパタと扇ぐ百井くんの様子から伝わってきた。
「ニナも写真始めればいい」
暗くて判別しにくいけれど、赤いレンガ屋根と白い壁の洋風造りの建物に蔦が絡まり、ちょっとした洋館みたくなっているうちの写真館を見上げて、百井くんは唐突に言う。