初恋パレット。~キミとわたしの恋の色~
 
「とにかく仁菜、あんたはもう百井に声かけないほうがいいと思う。……あんまり言いたくないけど、クラスで浮きたくなかったらさ」

「うん……」


ホームルームの予冷が鳴り、亜湖はそう言い残して自分の席に帰っていく。

亜湖は基本的に毒舌しか吐かないけれど、最後に言ってくれたように、ちゃんとわたしのことを心配しているのが伝わるから好きだ。

そして、わたしが忠告を無視して百井くんと関わりを持ち続けようとするなら、彼女もきっと彼やわたしと一緒に浮いてくれる、とても優しい女の子だ。





それからの時間は、昨日のやり取りなんて最初からなかったように、百井くんとは目も合わず、もちろん会話もないまま、ただ淡々と過ぎていった。

お昼休みになると百井くんが教室からいなくなるのは、いつものこと。

でも、ひとつだけわかるのは、おそらくあの美術室に行ったのだろうということだ。


「ごめん亜湖、そういえばわたし、昨日の掃除の報告、まだ池のんにしてなかったんだ。ちょっと職員室行ってきていい?」


亜湖の倍の早さでお弁当を食べ終えたわたしは、タイミングを見計らいつつ不自然に聞こえないように意識し、彼女にそう告げる。
 
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