私の思い~きっかけとタイミング~

チラリとこちらを見る井上さん。

私は思わず口を押えてしまった。

「すいません…。」

でも私がそんな井上さんの姿を見かけたのは1回や2回じゃない。

そのそれぞれが違う相手。

だから井上さんはそう言う人なんだと思って、苦手だったのかもしれない。

「新田さん、言い訳させてもらって良い?」

赤信号で一旦車が止まると、井上さんは私の目を見る。

「まあ、会社内でモテると言うのは認めよう。営業と言う事もあって、いろんな部署に無理なお願いも結構している。そこでお礼を…と持ち掛けると、女性には決まって食事に連れ出される。」

そこで信号が青に変わり、車を発進させる井上さん。

「夜に食事に行くことを避けて、何とか休日のお昼に設定しているんだ。それが俺のお礼の精一杯。次にまた何かお願いをする事もあるから断れないし、なかなか大変なんだよ。半分接待でもしている気分。」

そう言って井上さんは溜息をついた。

「でもそんな所を新田さんに見られていたなんてな…。」
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