私の思い～きっかけとタイミング～

近くに人はいないけれど、思わず私は周りを見渡し人差し指を口に当てる。

「…でも聞いてもらえます？」

私は声を潜めて、綾子さんに話す。

「じゃあ、恵太君は美紗ちゃんに手を出さなかったって事？」

少し驚いたような美紗さんの答えに、私は頷いた。

「私的には、有りがたかったんですけどね…。でもそれで恵太は良かったのかなとか、実は私は恵太にとってそんな相手じゃないのかなとか考えちゃうんですよね。」

私は頬杖をついた。

「でもちゃんと井上さんにお断りしてからじゃないといけない気もしてて…。」

昨日恵太のマンションで感じた違和感。

それはきっとこれのせい。

「ねえ、美紗ちゃん。」

綾子さんはふわりと笑う。

「恵太君は美紗ちゃんに無理してないかって聞いたんだよね。それがすべてじゃないのかな。」