ランチタイムの王子様!

「まったく……。ホントにあのバカ息子のときたら、もうちょっと優しく教えてあげればよいのに」

「あ、でも。結構優しいですよ」

油が跳ねるような料理の時はお手本と言いつつさりげなく代わってくれるし。

分からないことがあって悩んでいる時は、煮詰まる前に声を掛けてくれる。

面倒見が良いんだなって私の方こそ驚いているくらい。

そして、なりより……。

“美味しいですか?”

……出来上がった料理の最初の一口を食べる時は決まって、蕩けそうな笑みを浮かべるのだ。

思い出すだけで身体の力が抜けてしまいそうなほど腰砕けになってしまう。

普段の王子さんが怖ければ怖いほど、魅力的な笑顔の虜になりそうで困る。

料理が上手くなりたいと真面目に思っていたのにこれでは目的がすり替わっている。

「本当に王子さんは人に料理を教えるのが上手ですよね。ご本人もすっごく料理がお上手だし……」

流行のお料理系男子ってやつ?

王子さんの手にかかればオシャレ系カフェ飯から本格和食までお手の物だ。

「昔から凝り性でね。母さんの作る惣菜は味が薄いとか、カロリーが高いとか、口うるさいわよ?」

「えー?良いじゃないですか。ちゃんとお店のことも考えてくれていて」

「そう?ひばりちゃんがそう言うならいいけど……。もし虐められたら直ぐに言ってね!!」

菫さんはそう言うと、力こぶを見せつけるように腕を90度に曲げて私を笑わせてくれたのだった。

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