先生、と呼べなくなる日まで。

声のした方を振り返ると、スクールバッグをリュックのように背負ってこちらに駆けてくる輝(ひかる)がいた。

平均より短めのスカートから伸びたスラッとした脚には少し筋肉がついていて、いかにも元気な女の子という感じがする。


輝はそのままのスピードで走ってきて私に体当りしてきた。

「痛っ!!」

『おっはよーんあみ』

「もー、あんたは毎朝元気だこと」

『同い年が言うセリフかそれ笑 あみ婆さんって呼ぶよ?』

「はぁ!?笑」


私と輝のくだらない会話を、先生はいつもと同じように 微笑みながら聞いている。




『あみ部長、輝先輩! 下田先生が遅いって怒ってますよ!』

校舎の3階の開いた窓から、部活の後輩ゆっちゃんが身を乗り出して叫んできた。

『まじ!?ヤバいよあみ早く行こ!』
輝はそう言って私の腕を引っ張る。



「先生、またあとでね!」

私は輝に引っ張られながらも顔だけを先生の方に向けて言ってから
校舎に入った。
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