好きになった相手には大体相手がいるんです
「あいつの言ってた好きな人って・・・・あれか・・・」

今あれと言った?

言った。

あの人か、とかあの男かではなくあれと言った。

あれ扱いするってことは戸田君に対して敵意とまではいかないが

何か思う事があったんだろう。


あんなのに俺は負けたのか・・・とか?


でも悠木君は視線をすぐ私に戻した。そして昨日のように意地悪な笑みを浮かべ

「希の好きな男はわかった。でも・・なんで詩真ちゃんが隠れる必要があるの?」

そりゃ~思うわよね。

「あはは・・・それにはいろいろと訳があって・・・・」

何となく嫌な予感がした。

「いろいろと訳があって・・ね~~~。じゃあその訳聞かせてよ。」

ほらやっぱり・・・そうなると思ったんだよね・・・

悠木君は手帳を広げると何やらボールペンに書き込みをし、再び胸ポケットにしまった。

「明日、マイ箸もって詩真ちゃんのマンションに行くからその時ゆーっくり
その訳とやらを聞かせてもらうよ。」

ニコッと笑ったその顔はさわやかさの中に黒いものを感じた。

私が断れない事を知ってての事だとわかったが

マイ箸もってなんて言われたら断れなかった。


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