あたしは君のラブティーチャー!




――カサッ。


授業中、隣のほうから折りたたまれた紙があたしの机に飛んできた。


「?」


不思議に思いながら開いてみると、そこにはこんな文字が。


【朔乃先生
本当にありがとうございました。

あの、デートのことでも相談したいこととかたくさんあるので、差し支えなければ、せっかくなので朔乃先生の連絡先も教えてもらっていいですか?】


え……。


あたしは、思わず陽のほうに視線を向ける。


陽は照れくさそうに微笑んで、「ダメですか?」と、口パクで尋ねてくる。


あたしはぶんぶんと首を横に振り、自分の携帯番号とメールアドレスを書いた紙を陽に渡した。


「ありがとうございます。ご迷惑おかけしますが、これからもよろしくお願いしますね」


口元に手を添えて、こそこそとあたしだけに聞こえるボリュームで陽が言った。


「任せなさいって」


あたしも笑顔で言えば、ふにゃりとさらに目尻を下げる陽。


そんな笑顔に胸がきゅっと狭くなるのを感じて、溢れそうになる自分の感情から逃げるように、陽から目をそらした。


だというのに、そのあと、休み時間になって届いた1通のメールを迷わず保護してしまう自分がいる。



【有明 陽です。
朔乃先生のおかげで、僕は頑張れています。
本当にありがとう!】



最後の一文が初めて敬語じゃない。


そのことが、とても嬉しかった。


あたしだけの“特別”なような気がして……。



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