アイスクリーム男子の作り方【アイスクリームの美味しい食し方番外編】
「店長、
これ、でかすぎません?」

俺は、
クロカンブッシュを見上げた。

チカは、えみちゃんの様子を見に行っている。

クロカンブッシュは、
フランス伝統のウェディングケーキだ。
小さなシュークリームが
積まれたケーキなのだが、
それにしたって天井つきそうなほど
高い。

「新って鋭いから、
バレないように
みんなで手分けして
シューを自宅で作ったんだけど、

みんなやたら作りすぎて、
こんなことに。

うちのマンションで
組み立てたんだけど、
ドアからでないと分かった時は
焦ったよ。」

すげー想像つくわ。

俺はクスクスと笑った。



「笑えるだろ。」

店長は、
俺の頭を軽く撫でた。


このタキシード、
小さいなんて思わなかった。

身長同じくらいだし、
俺の中の店長は、
身体は細いけど、
ずっと大きな人だったから。

「もうちょっとゆっくり
大人になぁれ。って
育てたのに、
駄目だったなぁ。」

店長は両手をあげて伸びをした。


「そんだけ、子育てが
上手だってことで。

でも、まだまだじゃないですかね。
特にパティシェとしては、
全然。」

俺は、店長にけしかけた。


「…。
そうだな。

新、ちょっと、このクロカンブッシュ、
アレンジするか。
おんなじ味じゃ飽きるだろ!」

店長は、
手を叩いた。

「はい!」

俺は、
また店長の背中を追いかけて
厨房に入った。





「店長の背中」
おわり
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