アイスクリーム男子の作り方【アイスクリームの美味しい食し方番外編】
「わぁ、
婦人会のおばちゃんと
漁師のおっちゃんたちから?
すっごく嬉しいよう!!」

もらったばかりの魚を
みんなに振舞おうと
チカがさばいていく。

もちろん、
ヴェールをつけたまま。
かろうじて割烹着をつけている。

「ねぇ、お姉ちゃん!
それじゃぁ、
危ないよう!」

実の妹のように仲がいい美結ちゃんが、
制した。
さすがだ。

「はい!
首元、ワンピース見えてるから、
タオル挟みなよ。」

「そだね。ありがとー。」

とチカは、
タオルを首に巻いた。


そこじゃねーだろ。


「あらあら、チカちゃん、
だめだよー。
血が飛んじゃうよ。」

叔母さんがチカを止めた。

そうだよ。
せっかくの花嫁さんなんだから。
俺は深く頷いた。
大体、結婚式に
殺生はご法度。
俺でさえ知ってるっつーの。


「ほーら、こんでいい。
洋菓子屋なんだから、
魚臭くちゃかなわんでしょう。」

叔母さんは、
テーブルと床に
ビニールシートを敷いた。


「もう、めでたいんで、
いいじゃないですか。

ほら、チカちゃん。」

店長は、ふきんと
水を入れたボウルを持ってきた。

「思いっきりやれ。
俺も刺身が食いたい。」

と良さんは、
どこから持ってきたか
舟を担いできた。

「みんな、ありがと…」

チカが涙ぐんだ。

その時、

「ちょっと待ったあああ!!」

ヴェールの持ち主である
姉さんが、
ちょっと待ったをかました。

「それじゃぁ、ヴェールが汚れる!」

さすがに、
ヴェール汚されるのは
姉さんでも気になるよな。

「ごめんなさい…。
気が回らなくて…。」

チカは謝った。


「いいのよ。
次からはこうしてね。

はい!後ろ向いて。

で、こうやって、

輪ゴムで
まとめて止めて、


でーきたっ!!」

「お姉さん…」

2人は微笑みあった。
髪の毛みたいに、
輪ゴムで纏められたヴェールが
シュールすぎる。






…。





「ってなんで輪ゴムなんですか?!

取ればいいでしょ?
取れば!
なんで取らないんですか?」

俺は思わずどなった。


すると、
みんなが唖然とするなか、

くくくっと
つぐみさんが笑った。


「お嫁さんだからに
きまってんじゃん。

ねー。」

「「「ねー。」」」

とみんなが声を合わせた。


花嫁が刺身さばくとこが
みんな見たいんだな。

そうなんだな。


みんなの顔に
わくわくと
書かれていた。


この家に
ご法度はない。
ということを改めて知った。





「生き生きと鮮魚をさばく花嫁」

おわり
< 85 / 87 >

この作品をシェア

pagetop