復讐クラブ
一人目

「ねえ、前の雑誌みたぁ?」

「あーね、あれ、めっっちゃ可愛いかったよね!とくにあの春ちゃんのさ、服!」

春の風がふく教室。男子たちは、外へ。女子達は、教室で青春を語り合っていた。青春を謳歌していた。その一角で、私は…

「…」

私、北田彩は部活をどれにするか悩んでいた。別に、どれでもいいんだろうけど…?でも、決められない。そうだ、大人にとっては、どうってことないだろうけど、花の中学生だもの。

私がプリントとにらめっこしていた。

「おい、北田。お前、そんなプリントやってる暇あったらさ、俺たちに献上しなよ。その時間をさぁ???」

そう私に話しかけてきたのは、上沼りあ。女子達のリーダー的存在。上沼さんは、そう言って部活のプリントをビリビリに裂いた。

「まずうちさぁ…屋上あるんだけど、落ちてかない?」

ドッと、教室が盛り上がる。

「ちょっ、りあー、野獣先輩のネタ使うとかー卑怯ー」

「お腹痛い」

ニヤニヤと笑い、腹を押さえる人や、机をバンバンと叩き、笑いをこらえている人もいた。

私はというと、スティックのりで破れたプリントをつなぎ合わせていた。

「…あのさ、うちらバラ組の邪魔なんだけど?」

上沼が眉間にシワを寄せ、細い目で私を睨みつけながら言った。

バラ組というのは、私のクラスの名称だ。女子が殆ど美人で、2人は雑誌のモデル、一人は子役。中休みになると、他のクラスの男子たちが女子を遊びに誘う。

「あー、そうだ!ねぇねぇ、皆!!これから、北田のメイクショーやるよー!」

「えっ」

思わず口から溢れた言葉。このまま、無視すればいつか飽きるだろうと思っていた作戦も、この時で失敗してしまった。上沼は、ニヤニヤと私を見つめる。

「誰か提案なぁい?」

「はぁーい」

そう言って速攻に手を挙げたのは、クラスのゆるキャラの「星 星羅(ほし せいら)」。甘ったるボイスで有名だ。

「まずはぁー、北田の臭ぁ~い髪を、切るといいと思うよォ」

ニコッと笑う、星羅。

「そうだね。んーじゃあ、誰が切るかな…あ、メイ、やってみな!」

「ほーい、練習としてやってみよ!」

美容師が夢のメイは、工作用のハサミを持ち、私の席に近づいてきた。

教室の隅の一角、そこは処刑場。…私専用の。夢なら良かった。


___けれど、私の「危険回避センサー」が反応していることは、夢ではなかった。

< 1 / 2 >

この作品をシェア

pagetop