お菓子な男の子
斗哉くんの視線の先を、私も見つめる。ストーカーって一体………えっ!?


「気づいてたんだ」
「ま、真島くん!?なんで!?」


予想もしていなかったことに、驚きしか出てこない。いつからいたの?どうしているの?斗哉くんは知ってたの?それならどうして私に教えてくれなかったの?


「駅からずっと気づいてたよ。久しぶりだね、亮輔くん。君が小学生以来かな。顔、全然変わんないね。見てすぐわかったよ」
「斗哉さんも変わらないね」


2人はあまり接点がない。小学校に通う時期が少しかぶってただけ。それなのにお互いの名前も顔もしっかり覚えている。
あっ、そんなことより、真島くんがどうしているのか……疑問だ。


「真島くん、どうしてここに……?」
「2人で駅にいるところを偶然見かけて。杏奈ちゃんが心配でついてきたんだ」
「心配?」


斗哉くんがいれば危ない目に遭うことなんて……


「斗哉さんは昔から、優しい顔して笑顔浮かべて、本当はなに考えてるかわからない人だったから。わかりやすい斗真とは正反対。杏奈ちゃんを見る目は明らかに妹を見るそれとは違うでしょ?今日だって……」


私には真島くんの言っている意味がわからない。
斗哉くんを見た。きっと斗哉くんも不思議そうな顔をして………え?笑ってる……


「亮輔くんは俺と似てるよね、不本意だけど。今日は……任せてもいいか」


斗哉くんはベンチから離れていく。私も立ち上がって追いかける。
真島くんの横を過ぎるとき、真島くんに腕をつかまれた。


「ちょっ……どうしたの、真島くん」
「杏奈ちゃん、僕と一緒に帰ろ?ほら、明日からの合宿の話でもしながらさ」
「え、でも私は斗哉くんと……」
「いいよ杏奈。亮輔くんと帰って。明日からの合宿も楽しんでおいで。俺じゃだめだったみたいだから……」


斗哉くんはこっちを見てくれない。背中だけじゃ何もわからないよ。さっきまで合宿に行くのも反対してたのに。
この数分間の2人のやりとりが全然わからない。2人だけで納得しちゃって私は……?


「斗哉くん!」
「杏奈……」


斗哉くんの声はあまりにも小さくて。


「ずっと好きだったんだよ。妹じゃなくて、ひとりの女の子として」
「え……」


胸がずしっと重くなる。
やっと振り向いた斗哉くんの笑顔は震えていた。
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