お菓子な男の子
家についても、みんなのことが頭の中をぐるぐるまわっている。
斗真のこと、斗哉くんのこと、真島くんのこと、千夜先輩のこと……


"怖い"


そういって避けてきたことは、今までいくつあっただろう。
それで得られたものはなくて、誰かを傷つけてきただけだった。
もうやめなきゃ。逃げるのは、もう……。





あまり寝付けずに朝を迎えた。
登校時間。ドアを開ければいつものように、私を待っている斗真がいる。


はずだった。


「おはよう」


どうしよう。言葉が出てこない。その姿を待っていたはずなのに……


「なんだか、何年も会っていないような、そんな感じがするね」


どうして私は、その名前すらも言えないの?


「会うって思ったら、急に怖くなって……本当にごめん。謝らなきゃいけないことはたくさんあるのに。俺は杏奈を傷つけた。みんなを裏切った。壊したのは自分だ。それなのに……」


目の前には、真島くんがいた。
うつむくその姿と言葉に、私の中で、何かがはじけた。そうか、怖いのは私だけじゃなかったんだ。
でも、真島くんは悪くないんだよ?何も知らずに追いつめてたのは私でしょ?


伝えなきゃ。私の気持ち。


「悪いのは私だよ。何も知らなかった。知ろうともしなかった。それで無意識に傷つけてた。本当にごめんなさい」


やっと、ちゃんと謝れた。あとは……


「勝手なのはわかってる。でも、でもね……私、真島くんとあの頃みたいに笑いあっていたい。真島くんとのつながりをなくしたくない。これからも真島くんと……」


思いを伝えたい……のに、言葉がつまる。
あと1歩踏み出せば、あと数㎝手を伸ばせば、真島くんに触れられるのに。


「俺は……」


真島くんが口を開いた。
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