お菓子な男の子
約1時間で、初回上映は終わった。
この高揚感にいつまでも包まれていたかった。


「感動したね、アンちゃん」
「うん……」


言葉に表せなかった。何度も見ているはずなのに、今日は特別な気持ちだった。
あの日の景色と今日が重なって、胸がいっぱいになった。


リクライニングシートを起こすと、後ろからポンポンと肩をたたかれた。


「杏奈ちゃん」
「千夜先輩……?」


いつになく真面目な顔。先輩も感動したのかな……


「星を見て瞳を潤ませてる君に心がグッときたよ」
「どこ見てるんですかっ‼星みてください、星っ‼」
「星より君の方が輝いてい……」


もう無視した。千夜先輩を後ろにするんじゃなかった。リクライニングだった。
半分いびきをかいて寝ている斗真をはたき起こし、上映会場の外に出た。


慌てて追いかけてきたリンゴのことを見ずに、手をひいて歩いた。


「行こっ、リンゴ!星に興味のない人たちは置いていこうっ!」
「ちょっと待っ……」
「4階から見ていこっか」
「あの!違います!」
「何が違うの?リン……ゴ?」


振り返った先には、少しおびえた様子の知らない女の子がいた。


だ、誰っ!?
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