お菓子な男の子
それからしばらく、千夜先輩と腕を組んだままの花梨ちゃんの話が続いた。


「館長さんの家にいるんだ」
「はい。ほんとは一人暮らしかコウちゃんのお家に住みたかったんですけどね」


千夜先輩が懸命に首を横に振っている。


ご両親はともに天文学者で、ヨーロッパを拠点に各国を飛び回ってるらしい。中学までは転校を繰り返しながらインターナショナルスクールに通っていたけど、日本に帰りたくなってこっちの高校を受けたみたい。


「パパは反対したんですけど、ママも協力してくれて押しきったんです。やっぱりコウちゃんに会えないのは寂しくって…」
「帰国子女!?すごいじゃん‼ね、なんかしゃべってみてよ!」
「どの国の言葉にしますか?5ヵ国は大丈夫ですよ」


日本語と英語は当たり前で、あとはフランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語らしい。


「そんなに話せるとかスゴすぎ‼」
「まだ自慢になりませんよ。パパとママはアジア方面も習得してますし…」


ん?なんか嫌味に聞こえてきた……それになんか、最初より花梨ちゃんの話し方が固いっていうか、他人行儀っていうか……


「あの!」
「な、なに!?」


花梨ちゃんのいきなりの大声にびっくりした。


「天文部らしい活動ないなら帰ってもいいですか?コウちゃんも疲れてるみたいですし」
「え、それは……」


それは花梨ちゃんのせいでは?という言葉は飲み込む。


「それではおつかれさまでした。帰ろっ、コウちゃんっ‼」
「ちょ、ちょっと待っ……一臣、助っ……一臣~っ‼‼」


私たちと並んで話を聞いていた久喜会長は、にこやかに手をふっていた。
2人の姿が消えると、リンゴが頬を膨らませながらしゃべった。


「花梨って子、私は嫌いかなぁ!なんかワガママそ!」
「チヨにはいい薬だな」
「あはは?」


会長の一言は、私には意味が分かるような分からないようなだった。
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