メガネ殿とお嫁さま


「聞かないの?」

僕は、とうとう
車の中で切り出した。

「…。」

彼女が少しびくりと
身体を震わせた。



「昨日の夜誰といたか。」

僕は、
彼女を見ずに続けた。


もう、
いくら渋滞でも、
僕は車を降りない。



「女だよ。
すごく好きな人。」

僕はそう言い放ったが、
彼女は、何も言わなかった。


ただ、じっと、
息を殺すように、
少し泣いていた。

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