メガネ殿とお嫁さま

それでも、きっと。




それからは、
あっと言う間だった。


彼女は、次の日に、
みんなに惜しまれながら、
日野原家を去った。

「それでは、皆様、ご達者で。」
と笑う彼女の台詞が、
武士臭くて、僕は笑ってしまったのだ。

笑顔でお別れができたことを
みんなに感謝した。

お世話になったお礼と
朝からパンを焼いてくれた。

僕は、何日にも分けて、
そのパンを食べた。


お祖父様は、すっかり静かになった。


彼女以上に気に入る嫁候補が
なかなか見つからないことと
僕が眼鏡を外したことが
原因だ。


離れに吊り下げられた白い布も
もうどこにもなかった。



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