キミがこの手を取ってくれるなら

「奈緒子ちゃんに出会った頃の私だったら絶対奏一と二人きりになるのだって『嫌だ』と言ってたと思うけどね…私はちゃんと自分の気持ちに向き合えたから、大丈夫よ『告白』しても」


あまりに志帆さんが綺麗に微笑むから、ちょっと意地悪したくなった。

「奏ちゃんが私のこと『好き』って言っちゃったらどうします?」と冗談っぽく聞いてみた。


すると、「あら、わたしの『しあわせ』が居なくなっちゃうのは困るわね。だったら、私、純くんを誘惑して、オトシて、結婚しちゃうわよ」とさらっと返された。

志帆さんにも、私の気持ちは筒抜けだったけど…それだけは困るし、志帆さんならさらっとできそうな気がする。


「…自分の気持ちに向き合った後の目標が無くなるので、誘惑だけは止めてくださいね」と言うと、

「分かったわ」

志帆さんはケラケラと笑いながら言った。
出会った頃からだいぶ雰囲気は柔らかくなったけど、この豪快な笑い方は変わらない。
私は彼女のこの笑顔が大好きだった。

「奈緒子ちゃんも『しあわせ』になってね」

と、しあわせな花嫁になる予定の彼女からしあわせを祈ってもらった。


***

チャペルの扉が開かれる。

少しだけ緊張した面持ちでチャペルに入ってきた奏ちゃんは、チャコールグレーのタキシードを着ている。ベストは赤で、ブートニアも同じ色の深紅の薔薇を合わせていて、彼のすらっとした体型によく似合っていた。

讃美歌が流れる。
陽介さんと一緒に、志帆さんがチャペルへと足を踏み入れた。
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